町田康「人間小唄」

人間小唄 (講談社文庫)

人間小唄 (講談社文庫)


ふざけたことを書いている(と断じられた)作家が
キチガイに拉致られ、監禁され、某人気アイドルプロデューサーを暗殺するハメになる。
キチガイは自分がまともだと完全に思いながら凶行に走るが、
この作品はキチガイ視点なので批判の視点がない。
逆にそれほどおかしくない作家の行動にばかり非難がある。


最終的に作家は脳に障害を抱える。
今の時点ではこの作品を読み解くことができない。


クズがクズなりの正義っぽいものを振りかざした結果
全員が地獄へ突っ走っていく作品が俺は大好きなのだが、
これにはその爽快感もあまりない。
この作品の背後に「ほんとうの正義」に対する信頼が見え隠れするからか。
「ほんとうの正義」などない。


11/7追記
おそらくこの作家というのは町田康自身がモデルであり、
その作家についてふざけたことを書いて世間の支持を得ていること非難し、
徹底的に虐待することを狙ったのだろう。
いわば作家的な自殺。この解釈にも自信はない。