リズム感ある重厚な文体と引き継がれ断絶する家族の物語に酔いしれろ。 古川日出男「聖家族」

聖家族

聖家族

東北の一族狗塚家の牛一郎、羊二郎、カナリアを中心とした
妄想の東北を語り継ぐ物語。


ときに重厚に歴史をつづり、ときに軽快に現代をつづり、
まるで章ごとに全く違う小説のような様相をみせる。
非常に長い小説だが、ビート感はどの章でも衰えない。
特にDJが出てくる章では明らかに音楽的リズムを想起させる文体が現れる。
また狗塚家に伝わる格闘術の描写も見事といえる。
全く断絶された各章に見えるが、読み終えたときには強靭な一本の柱が全貌を表すだろう。
歴史、家族、格闘、宗教の要素が深く絡んだ古川日出男渾身の一作。