なんだかズレてる正義のヒーローの大スペクタクル長編小説。維新らしさマックス!  西尾維新「悲鳴伝」

悲鳴伝 (講談社ノベルス)

悲鳴伝 (講談社ノベルス)

自分は定期的に西尾維新を読まないと死ぬ奇病にかかっているので、
久しぶりに新作の悲鳴伝を読みました。
面白かった!


西尾維新といえば縦横無尽に発想が飛びまくる言葉遊び、
人の命を粗末にしながら駆動するストーリーが魅力的ですが、
その要素が存分に詰まった西尾維新らしい作品でした!


なにもない少年、空々空(そらからくう)は突然表れた優雅な男に言われる、
「私たちと一緒に人類を守り、地球を撲滅しないか」−−−


西尾維新なりにストレートに「正義の味方」を描こうとしたものなんでしょうが、
そこは西尾維新、ズレまくっているというかズラしているというか。
主人公が一応正義のヒーローなんですが、やっていることを正義ともなんとも思ってないあたりが好きです。
同じ西尾維新の作品「偽物語」でも正義のあり方についてはいろいろ語られていたものですが、
この作品では「これでいい」という結論を出さない答え方になっております。
その分、読後感はけしてすっきり爽やかとはいきませんが、西尾維新の作品でそんな読後感は今までなかったねw


ストーリーラインは大スペクタクルの連続で息つくヒマを与えません。
かなりの長編ですが、自分は続きが気になって2日くらいで読み終わりました。
キャラ造詣はもう手慣れたもので、ビシッとキャラ立ちし過ぎた奴らがわんさか出てきて逆に無個性の空くんが浮いてます。
まあ、そんな派手なキャラも次々と死んでいくのですが。萌えキャラ殺し西尾維新の再来って感じで。


もうちょっと真面目に正義について語れば文学作品としても読める気がしますが、
そこでエンタメに徹してしまうのが西尾維新ライトノベル作家としてのプロ意識なのか。
文章を読んでいるとものすごくノリノリで書いている様子が伝わってきて楽しかったです。
ちょっとしたくだらないダジャレも入れてしまうところが言葉遊び貧乏(←ホメ言葉ですよ)っぽくて笑った。