神林長平「グッドラック 戦闘妖精・雪風」

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)


戦闘機型の侵略異星体「ジャム」と戦う雪風シリーズ第二弾。
前回の話では人間よりも戦略コンピュータの方がよくジャムと戦えることを突きつけられ、
果たして人間は必要なのか、コンピュータでは不可能な役割とは何かを問う話であった。
今作ではその人間とコンピュータが協力することでしかできないことを具体的に描く。


この作品の何よりの魅力が「ジャム」というわけのわからない異星体と戦っている緊迫感だろう。
主人公深井零が属するFAF軍は敵のフェアリィ星と地球とを結ぶ異空間ゲートのそばに基地をかまえ、
ゲートを通って地球に飛来しようとする戦闘機と日々戦っている。
しかし、戦闘機の中にパイロットが乗っている様子もなく、ジャムの基地にも人影は全くない。
どうやら機械知性体のようなものらしいという検討はつくが、コミュニケーションの取り方が全くわかっていない現状だ。
さらに今作ではFAF軍内に裏切り者がいるとほのめかされ、事態は混迷を極めている。


そんな極限状況下で、人間と戦略コンピュータ、人間とジャム、戦略コンピュータとジャム
三つ巴ともいえる手探りなコミュニケーションは非常に困難で、それ故にコミュニケーションの本質を浮き彫りにする。
今作で初登場となる心理カウンセラーのエディス・フォス大尉はコンピュータやジャムに対しても
人間と同じやり方で精神分析を行い、コミュニケーションの手助けをする。
ジャムは本当に人間の敵なのか?戦略コンピュータや他の人間もジャムと同様に敵なのではないか?


深井零が愛機雪風と相互理解を深めていき、真の相棒になる展開にしびれる。


以前書いた第一弾のレビューはこちら。
人間は非効率的である。無人化すべき。神林長平「戦闘妖精・雪風<改>」