ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」(上)(下)

あなたは日々どのように世界を見て、判断しているだろうか。
例えばドイツでテロがあったと聞くと、とても危険な地域だという印象を受けるだろう。
また、宝くじは買うと基本的に損することを知っていてもわずかな可能性にかけて買ってしまうこともあるだろう。
本書はそういった判断は間違いだということと、なぜそのような間違いが起こるかをわかりやすく説明してくれる行動経済学の本だ。



人間の認知は直感的で素早い「システム1」と遅いが論理的にしっかりした「システム2」があるというモデルで考える。
経済学では人間は常に論理的で総合的に判断できると仮定されているが、実際はそうではない。
システム1が非常に多く活用され、往々にして間違わないが、ときとして重大な間違いを起こす。
システム1に間違いを起こす多くの例が紹介されている。


認知容易性:耳馴染んだ単語で構成された文章は真実だと思いやすい
容易な質問に置き換えて答える:採用面接では仕事ができるかを判断すべきだが、代わりに印象が良いかという問いに置き換えて判断してしまう
少数の法則:統計学的に信頼できないはずの少数サンプルのデータを信じて結論を出してしまう
アンカリング:値引きされた商品を買うとき、値引き後の金額よりどれだけ値引きされたかを重視してしまう


その他多くの例が紹介されている。
本書を読むといかに自分の普段の判断が印象や質問の文章、想像しやすいかで決まっており間違いやすいかわかる。
そして、間違いやすいことを認識した上でそれを修正することはほぼ不可能だとわかる。
普段ならいいけど、大きな買い物のときや決断のときはこの本を片手に落ち着いて考えたいものですね。