「マネジメント 基本と原則」 P. F. ドラッカー

読むのが長くなりそうなので感想も分割して書きます。
今回は第1章 企業の成果について。

企業は営利を第一目的だと考えがちですが、ドラッカーによると違うようです。
企業の目的とは顧客の創造だと。


企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。

企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら顧客だけが、財やサービスに対する支払いの意志を持ち、経済資源を冨に、モノを財貨に変えるからである。


既にある顧客の既存の欲求を満足させること、
顧客の気づかない欲求を満足させること、
また新規の顧客を満足させることを目的とすべきだとドラッカーは言います。
営利を目的としても何をすべきか見えてこず、また終わりもないということですかね。


そして顧客の創造という目的には2つの機能が必要だと。


顧客の創造のために、企業は2つの、2つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングイノベーションである。


ここからマーケティングイノベーションの解説に入ります。
個人的にはここが一番興味がありましたね。
近年twitterマーケティング!とかイノベーションを常に求める戦略を!
とか言いますけど、横文字で「がんばろう!」を難しく言ってるぐらいにしか思えなかったので。


消費者運動が企業に要求しているものこそ、まさにマーケティングである。それは企業に対し、顧客の欲求、現実、価値からスタートせよと要求する。

マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。


つまり顧客が欲しいものを作るようにする、これがマーケティングらしいです。
どうやら一般に言われている市場調査とやらはマーケティングの準備に過ぎないようですね。
そして販売、いわゆる「がんばって売ってこい!」的なものとは正反対ですね。


企業の第二の機能はイノベーションすなわち新しい満足を生みだすことである。

イノベーションの結果もたらされるのは、よりよい製品、より多くの便利さ、より大きな欲求の満足である。

既存の製品の新しい用途を見つけることもイノベーションである。イヌイットに対して凍結防止のためとして冷蔵庫を売ることは、新しい工程の開発や新しい製品の発明に劣らないイノベーションである。それは新しい市場を開拓することである。

イノベーションとは、発明のことではない。技術のみに関するコンセプトでもない。経済に関わることである。


ここでイノベーションに関する詳しい解説です。
経済的に需要が広がるような改良がイノベーションだとのこと。
つまり研究開発で新技術つくっても経済的にいい効果をもたらさなければイノベーションでもなんでもないってことですね。


次の段落では生産性は重要と説き、生産性を決定する眼に見えない要因を列挙しています。


生産性の要因1 知識―知識とは正しく適用したとき、もっとも生産的な資源となる。逆に間違って適用したとき、もっとも高価でありながら、まったく生産的でない資源となる。

生産性の要因2 時間―時間はもっとも消えやすい資源である。人や機械をフルに使ったときと、半分しか使わなかったときでは生産性に大きな差を生ずる。

生産性の要因3 製品の組み合わせ 4 プロセスの組み合わせ―どのように組み合わせればより生産的か。自社でするのと外注するのではいずれが生産的か。

生産性の要因5 自らの強み―収益が見込める事業すべてに進出すべきであるとはかぎらない。いかなるマネジメントにも能力と限界がある。それぞれの企業とマネジメントに特有の能力を活用し、特有の限界をわきまえることも生産性を左右する。
生産性の要因6 組織構造の適切さ―トップマネジメントが、マーケティングに関心をよせるべきであるにも関わらず、技術にしか関心を示さなければ、生産性は低下する。その結果被る損失は、単位時間あたりの生産量の低下による損失をはるかに上回る。


今までの要素もそうですけど、これは特に個人にもあてはまりますね。
知識をうまく活用することは大事です。そして時間、たくさん働けば成果が出やすいのは道理ですね。
自分の強みを理解し、自分がやるべきこと、人に頼むべきことをきっちり分けるのも大事。
そして自分の仕事において何が大切か考え、そこに関心を寄せなければいけません。

そして次は顧客の創造には欠かせない問い「われわれの事業は何か」について。


あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向付け、努力を実現するには、「われわれの事業は何か、何であるべきか」を定義することが不可欠である。

自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。しかし実際には、「われわれの事業は何か」との問いは、ほとんどの場合、答えることが難しい問題である。

「われわれの事業は何か」との問いに答えるには、顧客からスタートしなければならない。すなわち、顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。


具体的に言うと「われわれはどんな顧客のどんな欲求を満足すべきか」という問いですね。


「顧客は誰か」―顧客は常に1種類ではない。生活用品のメーカーは主婦、小売店という二種類の顧客を持つ。主婦に買う気を起こさせても、店が品を置いてくれなければ何にもならない。店が目に付くように陳列しても、主婦が買ってくれなければなんにもならない。
「顧客は何を買うか」―キャデラックを作っている人たちは自分たちは自動車をつくっており、事業の名前はGMのキャデラック事業部であると答える。だがはたして、キャデラックの新車に大枚のドルを支払うものは、輸送手段としての車を買っているのか、それともステータスシンボルを買っているのか。


こういった問いを考えることによって、どんなことをすべきか自然とわかってくると。
そしてこの意識を組織全体に張り巡らすことによって組織のメンバーが逆の方向に走ったりせず、
共通の目的を持って動けるのだそうです。


今回はこれまで。
斜体の部分は本文よりの引用(一部改変)でした。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則