庭をめぐる幻想的な短編集。ポスト市川春子的な。 田中相「地上はポケットの中の庭」

地上はポケットの中の庭 (KCx)

地上はポケットの中の庭 (KCx)

田中相(たなかあい)「地上はポケットの中の庭」読んだ。
庭をめぐる短編5作を収録したやさしいタッチの幻想的なマンガ。
ポスト市川春子的な雰囲気。
ファンタジー要素多めなコメディもあり、幻想的な光景が人の心をえぐるような悲しみを想起するものもあり。


お気に入りの一編はツンデレおじいちゃんの誕生日パーティーの話。
おじいちゃんは家族全員を愛しているために、幸せな光景が失われるのを恐れて
パーティーでもついしかめっ面をしてしまう。
そんなおじいちゃんが失う悲しみを覚悟してまで添い遂げたいと思ってしまった女の子(現在の妻)との出会い、
そして人を失う悲しみを恐れるようになったきっかけとなる父との別れが遡るように描かれる。


そしてラスト、
孫たちが楽しそうに踊るシーンと「老いた自分 なぜか不思議と悪くない」というおじいちゃんのモノローグ、
仏頂面だが穏やかにも見えるおじいちゃんの表情が重ねて描かれる。
非常に良い余韻を残す一編である。


このマンガはITANという雑誌から出てるのだが、
この雑誌はなかなか意欲的な雑誌なのでチェックしてみては。

想像系新雑誌「ITAN
http://kc.kodansha.co.jp/magazine/index.php/90003