凄惨な裏社会にかすかな光を灯す人情と信頼 真鍋昌平「スマグラー」

新装版 スマグラー (アフタヌーンKC)

新装版 スマグラー (アフタヌーンKC)

このまえビレバン行ったらこのマンガがめっちゃプッシュされててびっくりしました。
映画化されたからですかね。
というわけで今回は闇金ウシジマくんでもおなじみの真鍋昌平によるこの作品を紹介します。


スマグラー」は中国人の殺し屋コンビ「背骨」と「内蔵」がヤクザの組長を殺したところから始まるイザコザを
いろんな人物の視点から描いた群像劇です。
読む前は殺し屋、ヤクザと聞いてひたすらマッチョでハードで凄惨な話が続くのかと思いましたが、
予想外にも「本物になる」「信頼関係」あたりがテーマのナイーブでウェットな話でした。


この話の真の主人公は背骨ではなく、死体運送屋のバイトの砧くん。
彼は俳優を目指していましたが夢破れてギャンブルにおぼれ、多額の借金を背負ってしまいます。
そして高額のバイトとして死体運送屋を紹介され、今回の事件に巻き込まれます。


この砧が裏社会の現実を目の当たりにして、覚悟し成長する様が真に迫っていて圧倒されます。
殺し合いや騙し合いが当然の裏社会で、ギリギリのところの人情と信頼を描くあたり、
作者の人の良さが伺えます。


そんな風に意外と優しいこの物語ですが、背骨たちの戦闘(殺戮?)シーンや
拷問シーンは凄惨そのもの。
それらの凄惨さが激しいからこそ、その裏の優しさが強く浮き出てきていると思います。


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