正しい行動をするための考えを整理させてくれる良書。 マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(前編)
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: 文庫
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今やNHKのハーバード白熱教室で多くの人の知るところになったサンデル教授の本を読んだ。
テレビでは教卓からフレンドリーに「君の名前は?」「君の意見はどうだ?」と聞く姿が印象的だったと思う。
そしてイケメンだったね。
そんなサンデル教授の「Justice」という授業を1冊の本にしたのがこれだ。
本著は個人が何をすべきか、社会が何をすべきかという根本的なところから始まる
正義についての問題を哲学の考え方を参考にし、具体例についてわかりやすく考えていくというものだ。
まず正義について3つの基準が示される。
一つ目は「自由」。
個人の意志がいかに尊重されるか。
二つ目は「福祉」
より多くの人がより幸福になるように。
三つ目は「美徳」
道徳にそって善く生き、文化的な人生にするにはどうすればいいか。
2章ではベンサムの功利主義が紹介される。
功利主義とは福祉を快/不快の基準のみによって判断する考え方だ。
より多くの人がより幸福になるように、という最大幸福の原理だ。
しかし、一見正しいように見えるこの考え方にも欠陥はある。
古代ローマではキリスト教徒をライオンに食べさせるという娯楽があった。
功利主義的観点からは一人の不幸より多数の幸福の方が価値がある。
多くの人が楽しめるからという理由で一人の人間が殺されてもいいのだろうか?
3章ではリバタリアニズム(自由至上主義)が紹介される。
リバタリアニズムとは人間は全て、みずからが所有するものを使って、
みずからが望むことを行う権利がある、という考え方だ。
リバタリアンはその考え方により、同性愛を禁止する法律に反対する。
また、国家による富の再分配のための強制的な課税に反対する。
それらが個人の自由を侵害している、という理由で。
しかし、この考え方にも問題はある。
合意があるからと言って二つ目の腎臓を売ることを許していいのだろうか?
長くなってきたので続く。
正しい行動をするための考えを整理させてくれる良書。 マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(中編)