川上未映子「ヘヴン」

ヘヴン (講談社文庫)

ヘヴン (講談社文庫)


いじめられっこ同士の苦いボーイミーツガール。
主人公の「僕」はロンパリと呼ばれていて、女の子のコジマもけしてかわいい類の子ではないのだけど、
二人のか細くも確かな交流に胸が苦しくなる。
いじめの描写は淡々としており、それもまた別の意味で苦しくなる。


やがて追い詰められた「僕」はいじめる側の百瀬という少年に
なぜいじめるのかと問う。
彼は良いとか悪いとかじゃなくただ単に「そういう仕組みだから」と答える。


倫理は現実の力関係やルールの前では無力なのか。
「僕」が鬱屈を深め、力への憧憬を高める中、弱さを受け入れて強さに変えるコジマの姿が神々しく見える。
最後に「僕」が見た光は、希望の光か、もしくは百瀬たちと同じ領域に踏み入れてしまったのか。