登場人物全員クズ!不快過ぎて爽快。 映画「渇き。」

果てしなき渇き (宝島社文庫)

果てしなき渇き (宝島社文庫)


映画「渇き。」見てきた!
めっちゃくちゃ面白くて日本の映画まだまだやれるじゃんと思ったよ!


「渇き。」公式サイト


妻と娘に逃げられ、刑事をやめて酒におぼれる男藤島の元に娘加奈子が失踪したと連絡が入るところから物語が始まる。
失った家族の絆を取り戻そうとでも思ったか、藤島は加奈子の足取りを刑事の勘で追っていくが、
捜索していくうちに娘はとんでもないバケモノだとわかっていき……というお話です。


まず画面づくりが迫力満点だ。脂ギッシュな画、爽やかな画、ポップな画、グロテスクな画……
迫力ある画面づくりで演出を丁寧に行い、全てに悪意が隙間なくこめられている。
藤島が飯をくらい酒を飲むシーンの汚さもさることながら、
青春時代の加奈子を美しく撮るシーンにも悪意がこめられており、全く美しさに浸らせてくれない演出は見事。


役者の演技も真に迫っており素晴らしい。
主演役所広司がフラフラした足取りで恫喝する演技で藤島がはっきり暴力だけのクズだってわかるし、
役所広司の滑舌が良すぎるのがちょっと気になった。狂人ならあんなにはきはきしゃべらないと思う)
妻夫木聡がニヤニヤしながら他人を見下してしゃべるクズ演技も甘いマスクだけに余計に嫌悪をたっぷり感じさせてくれる。
ストーリーが豪華キャストに決して負けていない。
また、藤島が娘を探すパパというヒーローなどでは決してないのと同様に、
出てくる登場人物全員がことごとくクズというのが非常に清々しい。
クズどもが揃いも揃って憤怒と暴力の地獄に堕ちていく物語をノンストップで押し流していく。
また、加奈子も小松菜奈という女優が妖しい魅力たっぷりに演じきっている。
後で調べて新人だと聞いて驚いた。



また、殴り合いやカーアクションも決してかっこよくはなく無様なものを薄汚く撮っている。
これぞ日本のじめじめとしたノワールといった趣だ。
このように非常にグロテスクで陰惨な映画だが、自分は見終わった後に爽快感を得られた。
ここまで不快感を惜しまず埋め尽くされたら笑って見るしかない!



以下小説版のネタバレ含む感想です










確か小説版だとラストは藤島が女性教師を殺して藤島が一人で加奈子の死体を探しに行く筋書きだった気がするけど、
映画では藤島が女性教師に探させる展開になっている。
最後で失速して残念との感想があったが、おそらく二人でぐだぐだ雪山をさまようシーンはあえて入れたものだろう。
単に藤島の狂気を会話の中で描写するための話し相手が欲しかっただけなのかな。